発育性股関節脱臼とは
股関節は、太ももの骨の先端にある丸い「大腿骨頭」が、骨盤側の受け皿である「臼蓋」に収まることでできています。
発育性股関節形成不全には、主に次のような状態があります。
- 脱臼:大腿骨頭が臼蓋から外れている状態
- 亜脱臼:大腿骨頭が臼蓋から外れかかっている状態
- 臼蓋形成不全:臼蓋が浅く、大腿骨頭を十分に覆えていない状態

完全に脱臼している場合だけでなく、外れやすい状態や、股関節の受け皿が十分に発達していない状態も含まれます。
発育性股関節脱臼の原因と症状
原因
発育性股関節脱臼は、ひとつの原因だけで起こるわけではありません。生まれつきの股関節の不安定さに、出生前後のさまざまな要因が重なって発症すると考えられています。
特に注意が必要とされているのは、次のような赤ちゃんです。
- 女の子
- 逆子だった
- ご家族に股関節脱臼や臼蓋形成不全の方がいる
- いつも同じ方向を向く癖がある
- 脚を伸ばした状態で衣類やおくるみに包まれることが多い
- 股関節を自由に動かしにくい環境が続いている
これらに当てはまらない場合でも発症することがあります。また、抱き方やおむつの使い方だけが原因となるものではありません。
症状
赤ちゃんは股関節が脱臼していても、痛がったり泣いたりしないことが多く、ご家族が気づきにくい病気です。
次のような様子が見られる場合は注意が必要です。
- 脚を開いたときに、片側だけ開きにくい
- 太ももやお尻のしわに左右差がある
- 左右の脚の長さが違って見える
- 片方の脚の動きが少ない
- おむつ交換の際に、股関節が開きにくい
- 歩き始める時期が遅い
- 歩き方が左右に揺れる、または片側をかばっている

しわの左右差だけで脱臼と診断されるわけではありませんが、気になる場合は早めに整形外科へご相談ください。
発育性股関節脱臼の検査
診察では、出生時の状況、逆子や家族歴の有無、普段の抱き方や向き癖などを確認します。そのうえで、左右の脚の長さや皮膚のしわ、股関節の開き方、動かしたときの安定性などを丁寧に診察します。
必要に応じて、次のような画像検査を行います。
レントゲン検査
骨の発達が進んだ時期には、レントゲン検査で大腿骨頭の位置や臼蓋の形を確認します。検査方法は赤ちゃんの月齢や股関節の状態に応じて選択します。
乳児健診で異常を指摘されなかった場合でも、脚の開きにくさやしわの左右差などが気になるときは、一度整形外科を受診しましょう。
発育性股関節脱臼の治療
治療方法は、赤ちゃんの月齢や脱臼の程度、股関節の安定性などによって異なります。
生活指導・経過観察
軽度の場合は、股関節を曲げて開いた状態を保ちやすくする抱き方や衣類の選び方をお伝えし、定期的に股関節の成長を確認します。
装具による治療
脱臼や不安定性がある場合には、「リーメンビューゲル」などの装具を使用することがあります。股関節を適切な位置に保ち、大腿骨頭が臼蓋に収まりやすい状態をつくる治療です。
装具は自己判断で外したり調整したりせず、医師の指示に従って使用することが大切です。
整復・ギプス固定
装具で改善しない場合や、発見された時期が遅い場合には、牽引治療や麻酔下で股関節を元の位置に戻す整復を行い、ギプスで固定することがあります。
手術
装具や整復による治療で改善が難しい場合には、手術を検討します。治療後も股関節が順調に成長しているか、定期的な診察や画像検査で確認する必要があります。
一般的に、早期に発見するほど身体への負担が少ない治療を選択しやすくなります。
手術が必要な場合、近隣の病院へ紹介状をお書きします。
発育性股関節脱臼の予防法
すべての発育性股関節脱臼を予防できるわけではありませんが、赤ちゃんの股関節を自然な姿勢に保つことで、発症や悪化のリスクを減らせる可能性があります。
脚をM字型に保つ
赤ちゃんの股関節と膝が曲がり、両脚が自然に外側へ開いた「M字型」が基本の姿勢です。脚を無理にまっすぐ伸ばしたり、両脚を閉じた状態で固定したりしないようにしましょう。
コアラ抱っこを心がける
赤ちゃんを保護者の身体に正面から密着させ、両脚で身体を挟むように抱く「コアラ抱っこ」が推奨されています。首がすわるまでは、必ず頭と首を支えてください。
衣類やおくるみで締めつけない
おむつや衣類は、赤ちゃんが脚を自由に動かせるゆとりのあるものを選びましょう。おくるみを使用する場合も、脚を伸ばした状態で強く巻かないようにします。
乳児健診を受ける
1か月健診や3〜4か月健診など、生下時に受けた場合でも自治体や医療機関が実施する乳児健診を受けましょう。健診前でも気になる症状があれば、時期を待たずにご相談ください。

発育性股関節脱臼に関するよくある質問
Q.発育性股関節脱臼は、生まれたときから脱臼しているのですか?
A.必ずしも生まれたときから脱臼しているわけではありません。生まれた後の成長過程で、股関節が徐々に外れたり、発育が不十分になったりすることがあります。そのため、現在は「発育性股関節形成不全」と呼ばれています。
Q.脱臼していると赤ちゃんは痛がりますか?
A.乳児期には、脱臼していても痛がらないことが多くあります。機嫌がよくても、脚の開きにくさや左右差が見られる場合はご相談ください。
Q.太もものしわが左右で違います。脱臼でしょうか?
A.しわの左右差だけで脱臼と決まるわけではありません。ただし、股関節脱臼を発見するきっかけのひとつです。脚の開きにくさや長さの違いもある場合は、早めの受診をおすすめします。
Q.乳児健診で問題がなければ、その後は心配ありませんか?
A.健診で異常を指摘されなくても、その後に脚の開きにくさや歩き方の異常が見つかることがあります。気になる変化があれば、健診結果にかかわらず受診してください。
Q.抱き方が悪いと股関節脱臼になりますか?
A.抱き方だけが原因ではありません。ただし、脚を閉じて伸ばした姿勢が長く続くと、股関節に負担がかかる可能性があります。股関節と膝を曲げ、脚がM字型に開く抱き方を心がけましょう。
Q.治療すれば普通に歩けるようになりますか?
A.早期に発見し、適切な治療を受けることで、問題なく成長できるケースが多くあります。一方で、股関節の受け皿が浅い状態が残ることもあるため、治療後も定期的な経過観察が大切です。
Q.どのような場合に整形外科を受診すればよいですか?
A.脚の開きにくさ、しわの左右差、脚の長さの違い、片側の脚の動かしにくさ、歩き方の違和感などがある場合はご相談ください。女の子、逆子、股関節疾患の家族歴があるなど、リスク因子が重なる場合も早めの相談をおすすめします。
赤ちゃんの股関節脱臼は、早期発見が大切な病気です。「少し気になる」という段階でも、どうぞお気軽に当院までご相談ください。