股関節の病気
変形性股関節症
変形性股関節症とは
股関節は、太ももの骨の先端にある丸い「大腿骨頭」と、骨盤側の受け皿である「臼蓋」によって構成されています。
骨の表面は弾力のある関節軟骨で覆われており、軟骨がクッションの役割を果たすことで、股関節を滑らかに動かすことができます。
変形性股関節症では、この関節軟骨がすり減り、次第に関節の隙間が狭くなります。進行すると骨同士が接触しやすくなり、骨のとげである「骨棘」や、骨の中に空洞ができる「骨嚢胞」などの変化が生じます。
病気の進行度は、一般的に次の段階に分けられます。
- 前股関節症:股関節の形に問題はあるものの、軟骨は保たれている
- 初期股関節症:関節の隙間が部分的に狭くなっている
- 進行期股関節症:軟骨のすり減りや骨の変形が進んでいる
- 末期股関節症:関節の隙間がほとんどなく、骨の変形が強くなっている
変形性股関節症の原因と症状
原因
変形性股関節症は、原因によって大きく「一次性」と「二次性」に分けられます。
一次性変形性股関節症
明らかな股関節の病気やけががなく、加齢などに伴って発症するタイプです。
年齢、体重、遺伝的な体質、股関節への負担など、複数の要因が関係すると考えられています。
二次性変形性股関節症
もともとの股関節の形や病気、けがなどが原因となって発症するタイプです。
日本では、臼蓋形成不全や発育性股関節形成不全など、股関節の受け皿が浅いことに関連して発症するケースが多くみられます。
そのほか、次のような病気や状態が原因となることがあります。
- 発育性股関節脱臼
- 臼蓋形成不全
- ペルテス病
- 大腿骨頭すべり症
- 股関節周辺の骨折や外傷
- 股関節の感染症
- 大腿骨頭壊死症
- 関節リウマチなどの炎症性疾患
症状
代表的な症状は、脚の付け根にあたる鼠径部の痛みです。股関節の痛みを、お尻、太もも、膝の痛みとして感じることもあります。
初期には、次のような症状がみられます。
- 立ち上がるときに脚の付け根が痛む
- 歩き始めに痛みがある
- 長時間歩いた後に痛む
- 運動や仕事の後に痛みが強くなる
- 朝や長く座った後に股関節がこわばる
進行すると、次のような症状が現れることがあります。
- 歩いている間も痛みが続く
- 安静時や夜間にも痛む
- 股関節の動く範囲が狭くなる
- 歩くときに身体が左右に揺れる
- 靴下を履く、足の爪を切る動作が難しい
- 階段や車の乗り降りがつらい
- 正座や和式トイレの使用が難しい
- 左右の脚の長さが違って感じられる
膝の治療を受けても痛みが改善しない場合、実際には股関節が原因となっていることもあります。

変形性股関節症の検査
問診
痛む場所や動作、症状が始まった時期、日常生活で困っていることなどを確認します。
乳幼児期の股関節疾患、過去のけがや手術、ご家族の股関節疾患についてもお聞きします。
診察
歩き方や姿勢、左右の脚の長さ、股関節の動く範囲などを確認します。股関節を動かしたときに、どの方向で痛みが生じるかも調べます。
レントゲン検査
変形性股関節症の診断では、レントゲン検査が基本となります。
次のような変化を確認します。
- 関節の隙間が狭くなっている
- 大腿骨頭や臼蓋が変形している
- 骨棘が形成されている
- 骨が硬くなっている
- 骨嚢胞ができている
- 臼蓋形成不全がある
通常は立った状態で撮影し、体重がかかったときの股関節の状態を評価します。

MRI検査
レントゲンでは分かりにくい関節軟骨、関節唇、骨の内部などを調べる場合に行います。大腿骨頭壊死症など、ほかの病気との判別にも役立ちます。
CT検査
股関節の骨の形や変形を立体的に確認する必要がある場合や、手術を検討する場合に行うことがあります。
変形性股関節症の治療
治療方法は、痛みの程度、関節の変形、年齢、生活状況などを総合的に判断して決定します。
レントゲンで変形がみられても、痛みや日常生活への支障が少なければ、必ずしも手術が必要になるわけではありません。
生活指導
股関節に強い負担がかかる動作を見直します。
- 長時間の立ち仕事や歩行を調整する
- 重い荷物を持つ機会を減らす
- 階段の昇り降りを減らす
- 低い椅子や床に座る生活を見直す
- ベッドや椅子を利用する
- 痛みが強いときは無理をせず休む
股関節をまったく動かさない状態が続くと、筋力が低下して歩きにくくなることがあります。適度に休みながら、症状に合わせて身体を動かすことが大切です。
体重管理
体重が増えると、歩行時に股関節へかかる負担も大きくなります。
体重を減らす必要がある方は、食事内容と運動方法を無理のない範囲で見直します。
運動療法・リハビリテーション
股関節周囲の筋肉を整え、関節の動きや歩行能力を維持するために運動療法を行います。
- 股関節周囲の筋力トレーニング
- 痛みのない範囲でのストレッチ
- 水中歩行
- 水泳
- 自転車やエアロバイク
運動の種類や強度が合っていないと、かえって痛みが悪化することがあります。医師や理学療法士の指導を受けながら行いましょう。
薬物療法
痛みの程度や体調に合わせて、鎮痛薬や消炎鎮痛薬を使用します。湿布や塗り薬を併用することもあります。
薬には副作用やほかの薬との飲み合わせがあるため、自己判断で長期間使用せず、医師の指示に従うことが大切です。
杖などの使用
杖や歩行器を使用することで、股関節への負担を軽減できます。
一般的に杖は、痛みがある股関節と反対側の手で持ちます。身体に合った長さや使い方について指導を受けましょう。
骨切り術
比較的若く、関節軟骨が保たれている場合(早期〜中期まで)には、自分の股関節を残すための骨切り術を検討することがあります。
骨盤や大腿骨の一部を切り、体重がかかる位置を調整することで、関節への負担を分散させる手術です。
人工股関節置換術
関節の変形が進行し、保存療法を続けても強い痛みや日常生活への支障がある場合には、人工股関節置換術を検討します。
傷んだ大腿骨頭と臼蓋を人工関節に置き換えることで、痛みの軽減と歩行機能の改善を目指します。
手術の必要性はレントゲンの状態だけではなく、痛みの強さや生活への影響、ご本人の希望などを踏まえて判断します。
変形性股関節症の予防法
変形性股関節症を完全に予防したり、すり減った軟骨を元どおりにしたりする方法は、現在のところ確立されていません。
一方で、股関節への負担を軽減することで、症状の悪化を抑えられる可能性があります。
適正体重を維持する
体重が増えるほど、立つ・歩くといった動作で股関節にかかる負担が大きくなります。無理のない範囲で適正体重を目指しましょう。
股関節周囲の筋力を維持する
筋肉には股関節を支え、動作を安定させる役割があります。痛みのない範囲で運動を継続することが大切です。
負担の少ない運動を選ぶ
水中歩行、水泳、自転車などは、股関節への衝撃を抑えながら運動できます。
痛みがあるときは、ジャンプや長距離走などの強い衝撃がかかる運動を控えましょう。
早期に整形外科を受診する
股関節の痛みを我慢して仕事や運動を続けると、症状が悪化することがあります。痛みに応じて早めに整形外科を受診してください。
定期的に股関節の状態を確認する
臼蓋形成不全や股関節脱臼の既往がある方は、症状が軽くても定期的に状態を確認することをおすすめします。
変形性股関節症に関するよくある質問
Q.変形性股関節症は自然に治りますか?
A.すり減った関節軟骨や変形した骨が、自然に元の状態へ戻ることは基本的にありません。ただし、生活の見直しや運動療法、薬物療法などによって痛みが軽減し、日常生活を維持できることがあります。
Q.レントゲンで変形があれば必ず痛みが出ますか?
A.画像上の変形と痛みの強さは、必ずしも一致しません。
変形があっても痛みが少ない方がいる一方、初期の変化でも強い痛みを感じる方がいます。
Q.変形性股関節症は必ず進行しますか?
A.進行の速さには個人差があります。
長期間ほとんど変化しない場合もあれば、比較的短期間で進行する場合もあります。定期的に診察や画像検査を受け、変化を確認することが大切です。
Q.痛くても歩いたほうがよいですか?
A.強い痛みを我慢して歩く必要はありません。
一方で、安静にしすぎると筋力が低下することがあります。痛みが強くならない範囲で、適切な運動量を医師や理学療法士と相談しましょう。
Q.運動によって軟骨は再生しますか?
A.運動によって、すり減った軟骨を元どおりにすることはできません。
ただし、股関節周囲の筋肉を維持することで、関節への負担軽減や歩行機能の改善が期待できます。
Q.膝が痛いのですが、股関節が原因のことはありますか?
A.あります。
股関節の痛みを、太ももや膝の痛みとして感じることがあります。膝の検査で原因が見つからない場合は、股関節の状態を確認することも大切です。
Q.臼蓋形成不全があると、必ず変形性股関節症になりますか?
A.必ず発症するわけではありません。
ただし、臼蓋が浅いと股関節の一部に負担が集中しやすいため、変形性股関節症の原因となる可能性があります。
Q.必ず手術が必要になりますか?
A.必ずしも手術が必要になるわけではありません。症状が軽い場合には、生活指導や運動療法、薬物療法などで経過をみます。保存療法で痛みが改善せず、日常生活への支障が大きい場合に手術を検討します。
Q.人工股関節の手術は、何歳から受けられますか?
A.明確な年齢制限はありませんが、一般的には60歳以降をオススメします。
年齢だけでなく、痛みの強さ、関節の状態、生活への支障、ほかの病気の有無などを総合的に判断します。
Q.どのような症状があれば受診したほうがよいですか?
A.脚の付け根の痛みが続く、歩き始めに痛む、長く歩けなくなった、靴下を履く動作が難しい、歩き方が変わったなどの症状がある場合は、整形外科を受診しましょう。
股関節の痛みを「年齢のせい」と考えて放置せず、早い段階で状態を確認することが大切です。脚の付け根や股関節周辺の痛みでお困りの方は、お気軽に当院までご相談ください。