「夏は正常だったのに…」冬に血圧が上がるのは珍しくありません
冬に血圧が上がるのはなぜ?寒い季節の血圧管理とヒートショック対策
「家で測る血圧がいつもより高い」「夏は正常だったのに」
朝晩が冷え込む季節になるとこのようなご相談が増えます。
血圧は季節によって変動し、一般に夏に低く、冬に高くなる傾向があります。
この冬の血圧上昇は、脳卒中や心筋梗塞、そして入浴中の事故(ヒートショック)の背景にもなります。
本格的に寒くなる前に、寒い季節の血圧との付き合い方を確認しておきましょう。
冬に血圧が上がる3つの理由
1. 寒さで血管が縮む
体は寒さを感じると、熱を逃がさないように皮膚の近くの血管を縮めます。
血管が細くなると、同じ量の血液を送るのに強い力が必要になり、血圧が上がります。
自律神経のうち体を緊張させる「交感神経」が働くことも、血圧を押し上げる要因です。
2. 汗をかかず、塩分を摂りやすい
夏は汗と一緒に塩分が出ていきますが、冬は汗をかく機会が減ります。
さらに、鍋物や煮物、汁物、漬物など、冬の食卓は塩分が多くなりがちです。
鍋の汁を飲み干さない、締めの雑炊は少なめにするといった小さな工夫が役立ちます。
食事の工夫は食生活+αで取り組む高血圧対策もご覧ください。
3. 動かなくなり、飲食の機会が増える
寒いと外出や運動がおっくうになり、活動量が減ります。
年末年始は飲酒や食べ過ぎも重なり、体重と血圧が上がりやすい時期です。
膝や腰の痛みが寒さで強くなり、さらに動かなくなるという方も少なくありません。
※血圧が高いと感じたら、当院では「自由行動下血圧測定(ABPM)」を用いて、24時間血圧測定を行うことが可能です。
ヒートショックとは?冬のお風呂に潜む危険
ヒートショックとは、急な温度変化によって血圧が大きく上がったり下がったりし、体に負担がかかることをいいます。
特に冬の入浴では、次のように血圧が上下します。
- 暖かい居間から寒い脱衣所へ移り、服を脱ぐ → 血圧が急上昇
- 熱い湯船につかり、血管が広がる → 血圧が下がる
- 湯船から急に立ち上がる → 脳への血流が減り、立ちくらみや失神
消費者庁は、高齢者の自宅の浴槽での溺水事故が11月〜4月の冬季を中心に多く発生し、交通事故による死亡者数を上回っているとして注意を呼びかけています。
特に注意が必要な方
- 65歳以上の方
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症などで通院中の方
- 肥満気味の方、睡眠時無呼吸症候群を指摘されている方
- 熱いお風呂や一番風呂、長風呂が好きな方
ヒートショックを防ぐ入浴の5つのポイント
- 脱衣所と浴室を暖めておく:入浴前に浴槽のふたを開ける、シャワーで湯を張る、脱衣所に小型の暖房を置くなどで、居間との温度差を小さくしましょう。
- 湯温は41℃以下、つかるのは10分まで:熱い湯や長風呂は血圧の変動を大きくします。肩まで長くつかるのも控えめに。
- 湯船からはゆっくり立ち上がる:手すりや浴槽のふちをつかみ、一度浴槽の中で座り直してから出ると安心です。
- 食後すぐ・飲酒後・眠れる薬を飲んだ後の入浴は避ける:いずれも血圧が下がりやすく、意識がもうろうとする原因になります。
- 入る前に家族にひと声かける:長く出てこないときに気づいてもらえるように。家族が在宅している時間の入浴がおすすめです。
お風呂だけではない!冬の「寒い場所」と「朝」にも注意
温度差が大きいのは浴室だけではありません。
暖房のないトイレや廊下、早朝の屋外も血圧が上がりやすい場所です。
- トイレ:便座ヒーターや小型暖房で暖かく。排便時に強くいきむと血圧が上がるため、便秘対策も大切です。
- 起床時:目が覚めたら布団の中で手足を軽く動かしてから起き上がりましょう。枕元に上着を置いておくと便利です。
- 朝の外出:ゴミ出しや新聞を取りに行くだけでも、帽子・マフラー・手袋で首元や手先を守りましょう。
- 運動:ウォーキングは寒い早朝を避け、日中の暖かい時間帯に。屋内でできる運動に切り替えるのも一つの方法です。
なお、朝だけ血圧が高い「早朝高血圧」の背景には、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることもあります。
大きないびきや日中の眠気がある方は、あわせてご相談ください。
冬こそ「家庭血圧」の記録が役立ちます
季節による血圧の変化は、診察室で月に数回測るだけではつかみにくいものです。
ご自宅での測定を続け、次の点を意識すると、冬の変化が正しくわかります。
- 測る部屋は寒すぎないようにし、毎回同じ場所・同じ条件で測る
- 数値は血圧手帳やアプリに記録し、夏との違いがわかるようにする
- めまいや立ちくらみがあった日は、そのこともメモしておく
測るタイミングについては高血圧の解説ページの「よくあるご質問」でご紹介しています。
当院では、24時間血圧測定(ABPM)で夜間・早朝の血圧変動を調べることもできます。
▼血圧測定アプリ
降圧薬を飲んでいる方へ
季節によって血圧が変わるため、医師が薬の量や種類を調整することがあります。
ただし、「冬だから多めに飲む」「今日は低いから休む」といった自己判断の調整は危険です。
下がり過ぎて入浴中にふらついたり、急に中断して血圧が跳ね上がったりすることがあります。
家庭血圧がいつもより高い日が続くときや、めまい・立ちくらみが増えたときは、記録を持ってご相談ください。
整形外科の痛み止めとの飲み合わせもあわせて確認いたします。
膝や腰が痛む冬も、動ける体づくりを
寒さで関節の痛みが強くなり、動かないことで体重や血圧が上がる、という悪循環は冬に起こりやすくなります。
当院では痛みの治療と血圧の管理を同じ日に行えるほか、屋内のマシンを使った運動や、理学療法士によるリハビリテーションもご利用いただけます。
天候に左右されずに体を動かせる場所として、お気軽にご相談ください。
こんな症状はすぐに救急車を
次のような症状が急に現れたときは、脳卒中や心筋梗塞の可能性があります。
受診を待たずに119番通報してください。
- 片側の手足がしびれる・力が入らない、顔の片側がゆがむ
- ろれつが回らない、言葉が出にくい
- 経験したことのない激しい頭痛
- 胸の強い痛み・しめつけられる感じが続く
また、入浴中に意識がない家族を見つけたときは、浴槽の栓を抜き、周りの人を呼んで119番通報しましょう。
まとめ
冬の血圧上昇は、寒さ・塩分・運動不足が重なって起こります。
部屋ごとの温度差を小さくし、入浴の仕方を見直し、家庭血圧を記録することが、脳卒中やヒートショックの予防につながります。
当院では、血圧の管理に加えて、心電図や血圧脈波検査(CAVI・ABI)、血液検査などで血管や心臓への負担も確認できます。
「最近血圧が高め」と感じたら、健診結果や血圧手帳をお持ちのうえ、お気軽にご相談ください。